自然から教わる豊かでリアルな暮らし
往復書簡連載
「自然から教わる豊かでリアルな暮らし」
すっかり月日が流れてしまいましたが、そして、ついこの前会ったけど(笑)。
「エスケープしたいー!えいやっ!と人生を変えてみたタイミング」は、2回あったなと記憶してる。どちらもエスケープとまではいかずに東京在住だったけど。
1回目は、10代後半で元夫とお付き合いすることになった時のこと。ものすごく前のことだけど! 彼の第一印象は、正直言ってちょっと気持ち悪いナルシストのおじさん(笑)。出会いはスカウトだったから、最初はお仕事の人だったんだけど、一緒にいるうちに恋愛的な感じになってきて。お付き合いするって決めた時は全く知らない世界に飛び込むワクワク感が大きくて、「ここからちょっと人生が想定外の方向に流れていっちゃうかもね。」って。
長女だし、年上の人との交流があまりなかった私にとって、10歳くらい年上の音楽業界の人とのお付き合いは、彼の破天荒で不安定な性格も含めてかなり刺激的だったし、思った通りに全く思いもしなかった方向へと流れ流されていき……………そこから就職活動も就職もしたことない私が、今の仕事をしているのは、この道だったからだと思う。
そして、「えいやっ!」2回目のタイミングは、以前からじっくりと温めていた地方と工芸と食の仕事がしたい気持ちが大きくなって、ファッションのお仕事を全て辞めて、できるだけ地方をまわってみよう!と決めた時。1つのクライアントとの契約を残して(家賃分ね)ほかを全て辞めて、会社の通帳にお金がなくなるまで自分の行ってみたいところに行ってみよう!と思ったんだよね。とはいえ、正直いくらあるのかあまりちゃんと見てなかったんだけど。
今まではやるべきことが目の前に現れたり、オファーをいただいたりして、それをこなしていくのが私の仕事のスタイルだった。自発的ではなく受動的というか、楽しく流されていくというか。もちろんやりがいもあるし、必要とされることが嬉しくて、とにかく期待を裕に超えていきたいという気持ちがモチベーションだったんだけど、急に全部辞めるという暴挙に出た(笑)。
それには、自分が今までファッション業界でブランドを作ってきた経験を、日本の底上げに役立てられるんじゃないかという根拠のない想いがあった。一方で、ファッション業界は安い価格での大量生産が主流になってきてしまって、このままだとデザインやクリエイティブが軽視されていく、その手伝いをするのが嫌だった。暮らしの傍らにある、美しいものや憧れを汚したくなかった。
地方は、その土地土地の風土やそこから生まれた文化や食があって、それが少しずつ形を変えながら脈々と受け継がれてきてる、そこがとっても魅力的に感じる。デザインをしたりブランドを作るという分業制というか、少し空を掴むような仕事をしてきたからか、自分の手でものを作り出す人に、すごく憧れがあるの。
と言うわけで、私は陽子の「えいやっ!」の選択を、本当に素晴らしい!と思ってる。慣れない土地で奮闘している姿を見ていると、とても私にはできないなとリスペクトしかないわー。この前お邪魔させていただいた時も、瑞々しく繁茂する緑たちのグラデーションが本当に眩しくて。そんな季節の移ろいをしっかりと感じながら、地球にタネや苗を植えてものを作り出すなんて、なんて素敵な暮らしなんだろうって!この写真の、ビニールハウスから降りてくる時の景色が大好き!
2017年ごろから多拠点生活をしたくて色々な地域に足を運び、実際に家も探してみたんだけど、地方の賃貸情報ってあまり出回っていないことが多いらしく魅力的な物件に出会えなかったの。全くの他人に貸したくない、という方が多いらしく、なかなか表に出てこないそうで、それを聞いてからは飲食店の人に聞いてみたり、仲良くなったその土地の人に聞いてみるようにしてる。魅力的な場所がたくさんあるから、焦らずゆっくり選ぶことにする(笑)。
今、陽子が住んでいる仁木町はとても素敵な場所だけど、もし他拠点できるとしたら、他にも住んでみたい場所はあるかな?
text by Hisako Namekata
田上陽子 「su herb」ディレクター
PR会社でオーガニックコスメなどを中心としたPRを経験後、スキンケアブランド「F organics」、トータルビューティーブランド「Celvoke」を立ち上げ、ディレクターを勤める。その後、北海道への移住を機に、パートナーの営むワイナリーでワイン造りに携わりながら、Suハーブ園をスタートし、自然の恵みを活かしたライフスタイルを追求中。ジュエリーブランド「ENEY」のブランドディレクターとしての顔も持つ。
行方ひさこ ブランディングディレクター
アパレル会社の経営、ファッションやライフスタイルブランドのディレクターとして活動。近年は食と工芸、地域での活動などエシカルとローカルをテーマに、その土地の風土や文化に色濃く影響を受けた「モノやコト」の背景やストーリーを読み解き、昔からの循環を大切に繋げていきたいという想いから、自分の語感で編集すべく日本各地の現場を訪れることをライフワークとしている。2021年より、地域と文化と観光が共生することを目的とした文化庁文化観光推進事業支援にコーチとして携わる。